スタッカート
それから、母はヒナから体罰の事をきき、すぐにピアノ教室を辞めさせた。

私は母に心配をかけたくない思いから、体罰を受けている事は言わないで欲しいと以前からヒナには言っていた。


もう怒られない、叩かれない。
この上ない安心感を、得ることができた。



それからしばらくして、私は少しずつ、またピアノに触れていくようになった。
辞めてすぐの時はピアノを見るだけでも頭痛がしたけれど、時間がたつにつれそれも無くなり、いつの間にか毎日ピアノを弾いていた。



そんな私に、ヒナは以前通っていたピアノ教室に戻ろう、と言ってきて。

正直その言葉にはかなり戸惑ったけれど、ヒナも一緒だということで安心し、またピアノを弾く事に決めた。




…しかし、それから六年たった今でも、たくさんの人や、真っ暗な部屋、スポットライトを見るたびに、体が震えたり、激しい頭痛に襲われたりするのは直らない。





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