スタッカート


今まできいたことのないような大きな音に、私はまず耳がやられるんじゃないかと思った。

ぐわんぐわんと頭に響いて、苦しい。

隣にいるヒナは、笑顔で頭を振ったりとんだりしている。


私はそんなヒナを見て驚いたけれど、周りの観客もみんなタオルを振り回したり、こぶしをあげたり、体を揺らしたりしているのを見て、

激しく動いている観客に巻き込まれもまれながら、もしかして、最前列のど真ん中で何もしないでただ突っ立ってみている自分のほうが変なんじゃないかと思った。


―ライブって、こういうものなんだ。


やっぱり、私には合わない気がする。

クラシックを静かに一人で聴いているほうが全然良い。

私はたくさんの人にもみくちゃにされながら、だんだんと人に酔ってきていた。

頭が割れるように痛い。

足元がふらついて、ちゃんと立っていられない。


今が何番目のバンドかなんて、わからなかった。
ライブを真剣にみている余裕はなかった。





……ライブハウスは、私が思い出したくないものばかりを頭に浮かびあがらせた。


真っ暗な観客席。

スポットライト。

たくさんの人の顔、顔、顔……。


もう限界だ、と隣を見ると大きな瞳をキラキラさせたヒナと目が合う。



「つぎ、あの子のバンドの番だよ!!」



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