actum fugae
 みんなにとっては冗談でも、私にとって、あんな後の彼のつっかかるような態度が悔しくて、悲しくて。

 だって、されたのは私の方なのになんで私がこんなにきまづい思いをしなきゃ駄目なの?って思ってしまう。

 ねぇ、葛城君。やっぱり君は、なんとも思ってない女とでも簡単にあんな事が出来ちゃう人なんですか?

 聞きたくて、だけど聞けない一言が私の胸にチクリと刺さったままだった。



 あの日。あんな事をされてからと言うもの、私は朝の間に花に水を上げることは無くなって一月が経った。

 朝の水やりを止めてから、クラス以外で彼と会う事も無くなった。勿論クラスで顔を合わせても周囲には生徒たちが溢れかえっているから彼から話しかけて来る事は無くて、私から話しかける事も滅多に無かった。

 それは悪かったのか、良かったのか。

 棘は未だに抜けた感覚はないけれど、それでも私は彼と一定の距離をきちんと保てていると、そう思っていた。



 私は大人で、彼はまだ子供。

 だからこそ私は壁を作らなければ駄目なのだ。私が彼に弱みを見せてはいけない。

 好きだと言う気持ちを示してはいけない。
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