actum fugae
 目と目が合うわけではない。何かを訴えられるわけじゃない。

 ただ、背中に感じるんだ。彼の。葛城君の暖かい眼差しを。



 もしかしたら、私の気持ち、なんて彼には筒抜けで、すでにバレてて。

 私のことからかって楽しんでるのかな、って思わない事も無い。

 だけど何も言ってこない事を良いことに、私はずっと、彼の前で一人の教師で居続けた。


 彼が、あんな風に私の名前を呼んでくれる、から。

 彼に、少しでも私の名前を呼んで欲しいから。



 四ヶ月目から、私はまた水やりを朝にすることに決めた。





 大人だとか、子供だとか。

 恋にそんなものは関係なくて。

 ただ好きだから。

 好きでいたいから、好きな人の姿を見たい。

 見ていたいと思うから。



 だから、今度は。

 朝練帰りの5分間、だけじゃなくて。


 朝練の最中の、君の姿をずっと、見つめていたいよ。
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