actum fugae
 二ヶ月も経っていれば毎日たったの5分だけだと言ってもそれがほぼ毎日となれば二人で共有する時間は意外と多いもので。

 私たちは少しずつお互いの話も交わすようになっていた。


「おっす、蛍チャン!」

「だからね、葛城君……!」

「やだって。俺の中で蛍チャンは蛍チャンなの♪」

「“なの♪”なんて可愛子ぶったって認めないんだからっ!」

「あー、はいはい。まぁ他の子たちの前ではちゃんと牧瀬センセーって呼んでるし問題ないじゃん?」

「まぁ、それはそうだけれど……」



 けれど人目、と言うものがあるのだ。

 仮にも私は貴方の先生で、貴方は私の生徒なのだから。

「ケジメは大切だと思うのよね」

 私がポツリとその言葉を漏らすと葛城君は目をパチパチさせて。

「俺なりにケジメつけてるつもりなんだけどなぁ……」

 それから何かを呟いたんだけれど、その声は思いのほか小さくて私の耳には届かなかった。
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