actum fugae
 だけど。

 それでも私の前に立ちはだかるのはやはり“先生”と“生徒”と言う壁で。

 “大人”と“子供”と言う境界線だ。



「……有難う。凄く可愛いけれど貰うわけにはいかないわ」

「えー、何でだよ?」

「生徒に買ってもらった、なんて。言えるわけないでしょう?」

「言わなきゃ良いじゃん!俺は蛍チャンの為にって思って選んで買ってきたんだよ?」

「そう言うわけにはいかないじゃない……ああ、じゃ、せめてお金払うから。それで良いでしょう?」

「そうやって自分だけ“大人”なフリしてっ……!」

「だって私は貴方よりは大人だもの」



 大人だからこそ、ケジメだけはきちんとつけなければいけない。

 私は真っ直ぐに彼を見つめて出来るだけ落ち着いた声で、ハッキリとそう告げる。

 告げられた彼の顔は今にも泣き出しそうな、悲しそうな表情で私はその後の言葉を続ける事が出来なくて。



「……金なんていらないよ。そのかわり、」


 悲しそうな彼の顔が私の胸をぎゅって締め付けて、どうして良いか解らなかった。

 ただ心の中で何回も何回も“ごめんね”を繰り返してはみるけれど、それが伝わる事は、無くて。
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