いつかまた桜の下で君に会えたら
「嫌なことがあったり、お母さんとケンカしたりすると、よくここで泣いてた」
「でも、俺が来ても木の陰に隠れて泣き止みまで絶対出て来なかったんだよね」
懐かしいなー。
そういうあの人は本当に懐かしそうで、それを分かりあえない自分がなんだか悔しかった。
なんで忘れちゃったんだろう。
「そろそろ帰ろっか」
そう言ってあの人が立ち上がる。
辺りは少しだけ薄暗くなっていた。
「そうだね」
私も立ち上がって、制服のスカートに付いた土を掃う。
ちょっと進んだところで立ち止まって振り返る。
ちょっと暗くなったときの桜も綺麗だった。
「俺はこのくらいの暗さのときの桜が好きだな」
後ろから声が聞こえて振り返ると、あの人も桜を見ていた。