いつかまた桜の下で君に会えたら




「好きかぁ」


隣にいるあの人に聞こえないように、小さく呟いてみる。


聞こえていないか気になってちらっと隣を見てみると、ただ上を向いていた。


よかった。

気付いてはいないみたい。



安心して目を反らそうとしたけど、反らせなかった。



あの人の横顔がなんだか凄く綺麗だったから。


そして、少しはかなかったから。



ただただあの人を見つめていた。


そうしたら、私の視線に気付いたのだろう。


あの人がこっちを向いた。



優しく笑って、私の手にその大きな手を近づけてくる。


優しく包み込むように繋がれたその手は温かくて優しかった。






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