いつかまた桜の下で君に会えたら
桜の木のところに行くと、あの人がいた。
私のほうには背を向けて、桜を見上げている。
息を整えながらゆっくりあの人に近づく。
あともう少しのところであの人がふりむいた。
「走ってきたの?」
ちょっと驚いているみたいだ。
私はただ頷いた。
「何かあったの?」
「これ、あなた?」
握っていて、ちょっとくしゃくしゃになった写真を差し出す。
思ったよりも声が掠れていた。
相当喉にきたんだろう。
あの人はちょっと驚いた顔をして写真を受け取った。
そして、小さく頷く。
「よく、この写真で俺だってわかったね」
「笑顔が」
「笑顔?」
喉がひりひりして、そこで言葉を切ると、答えに詰まったと思ったのかあの人が続きを促してきた。
「笑顔があなたと同じだったから」