いつかまた桜の下で君に会えたら
「顔は大分変わってるけど、笑顔は全然変わってない。だからわかった」
「そっか、笑顔かぁ」
あの人はまた桜を見上げる。
「じゃあ、俺のこと思い出したの?」
私に背を向けたままで問い掛ける。
「ごめんなさい。思い出してない」
これだけのことがわかっているのに、私はまだ思い出せてなかった。
「そっか。じゃあ名前もまだわかんないわけだ」
「名前は、ゆうた君?」
あの人はびっくりしたように振り返った。
「なんで名前?思い出してないんでしょ?」
つかつかとこっちへ近づいてくる。
「これに名前書いてあったから、そうかと思って」
差し出したそれを見て目を細めるあの人。
「あぁ、俺があげた押し花。まだ残ってたんだね」