シングル・シグナル・ナイト。
大きな駅に着き、電車を乗り換える。
次の電車は、箱ではなくトンネルをくり抜いてできたみたいな形だった。
窓が大きく、目の粗い牢獄に見えた。
ボタンを押して扉を開けるシステムに少し戸惑いと猜疑心を感じつつも、檻の中に身を投じる。
再び汚い色の照明装置に頭痛を覚えながら、手近な席に身を沈めた。
……それにしても、これは何を閉じ込めるためのものだろう。
檻には意味が在る、檻のような物にも意味が在る。
これは一志の中の小さな確信だったが、世界の中では大きな確信だった。
檻は、捕まえた物を入れる為にあるのか、誰かに捕まえさせる為にあるのか。
どちらにせよ、電車は檻ではない。
檻は檻であり、捕獲者と被捕獲者なしては成り立たない。
それはゴミのない世界ではゴミ袋が役に立たないのと同じ原理だ。
電車は電車でしかない。
何かを捕まえたとしても入れるためには用いない。
それでは何故、自分には檻に見えたのか。
答えは簡単だった。
自分が電車に捕まったのだ。
もう逃げられない。
そう、頭のどこかで確信していた。