シングル・シグナル・ナイト。
音楽が切れた。
世界が止まる。
成る程、音楽は世界でできていたらしい。
MDの調子が悪いのはいつものことだ、気にすることはなかった。
哀れんではいけない。
同情してはいけない。
このMDはそう作られているのだ。
曲の途中で止めるように。
ならば自分は何度も途中で曲を止められるしか術を持たない。
音楽を聞かないことでMDの仕事を無下になくしてはいけない。
MDとて家族がいて家計があるのだ。
一生懸命なものに同情はいらない。
そう思い、長く鋭い欠伸をした。
トンネルを抜けた。
そこには何もなかった。
雪國を期待していたのだが、どうやら宛が外れたらしい。
一志は、ただ落胆とともに故郷に着いた。