短編置き場・3
 郊外の川原にうちすてられた軽バンを住まいにして、男はいわゆるホームレスだった。

彼は一匹の雑種犬と一緒に、鉄くずやダンボールを集めては、その日その日の生計を立てていた。

青空が広がるまだ肌寒い春の昼下がり、男は「コムギコ」と名付けた相棒の雑種犬に、

「ねえ、たまには君も自分で何か稼ぎを見つけてきてごらんよ」

と、安い焼酎を飲みながら陽気に注文してみた。

コムギコはうれしそうにハッハッ、と息をして、草むらの向うに走っていった。
男はタバコに火をつけ、空を見上げた。

青い。

むかし、まだ会社員をしていたときに見た、どの空よりも、青い。

男は焼酎とタバコと、インスタントラーメンと、犬と、一緒に暮らしていて、今はこれでそれなりに幸せだった。
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