短編置き場・3
行く先まで敷き詰められた真紅の絨毯が、王様の磨き上げられたブーツの重みで柔らかに窪む。

王様の思いが絨毯のさらにもっと深くまで沈みかけたとき、大勢の人々があげる声が、王様が沈み込もうとした低い場所から湧き上がってきた。

「セバスチャン、なにやら外が騒がしいようだ」

窓際に身を寄せた王様は、それまでの生涯に目にしたこともない光景が眼下にあるのを発見した。

王宮に、地を埋め尽くさんばかりの人々が押し寄せているのだ。

誰しもが鍬や鎌や棒切れを手に、興奮しきった調子でなにかを叫びたてている。

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