短編置き場・3
いつのまにかコムギコも起きて、男の隣でお座りをしていた。

「なんなんだ、いったい?」

混乱する男に向かって、コムギコが、人間の言葉で、しゃべった。

「今こそお前さんの出番だ。俺の背中に乗ってみれ」

ハッとして男が見ると、コムギコがいつもの数倍の大きさになっている。

言われるままに男がコムギコにまたがると、コムギコは風を切って街に向かい走り出した。

街はすでに火の海だった。

巨大な蜘蛛の足が歩を進めるたび、建物は破壊され、火が闇夜にはじけた。
男は空を覆う巨大な蜘蛛に向かって、何発も拳銃を撃った。

バンバン。

蜘蛛が声無き悲鳴を上げて、こちらに振り返り、巨大な足を振り下ろしてくる。

それを、コムギコは華麗なステップでかわした。

男はコムギコに振り落とされないよう必死でしがみつき、体勢を立て直しては、蜘蛛に銃弾を撃ち込んだ。

バンバン。バンバン。
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