You or someone like you.
出会い or
思い出す事は余計な事ばかり。後悔ではなく春風のような生暖かいそよ風。
思い出のプレイバック。いつも同じ場面ではなく、忘れた頃に芽吹く人生の岐路の数々。

3年前、だろうか?初めて会ったのは、ノリータの袋小路にある小さな小汚いフレンチバーの外だった。
初恋の人と2度目の大恋愛にケリをつけたばかりの私は、いつも働くか酔いつぶれるかのどちらかだった。
久しぶりに会って意気投合した、インチキ芸術評論家でバイっぽいカールとバーやパーティーをハシゴするのが日課だった。
その日も、久しぶりに訪れた春の陽気に誘われて街を徘徊し、そのバーで安ワインを飲み続けていた。天気が良いからか、街は人で溢れ返り、バーの外にも人だかりができるほどだった。何が目的と言うわけではなく「何かが起こる」予感に囚われて、ソワソワと他愛もない話を肴に飲み続けていた。NYなんてそんなもんだ。「何かが起こる」予感は大抵の場合はずれる。ただ、1万分の1のチャンスで何かが起こった場合にはその場にいたい、という不思議な欲求に支配されてしまう街なんだ。

バーへ行く途中にカールは会う約束をしている友達の話をしていた。珍しい程の美男子でラウンジ・シンガー。才能よりも彼の美貌に惹かれて大きなイベントにブッキングする女性プロデューサーがいるとかいないとか。まあ、どうでも良い話だ。
カール曰く、「君も可愛いけど、絶対に釣り合わないと思う。」
私は、女を惑わせる美男子よりも変わり者の方が面白みがあって良いと思う。

バーに着いて2時間で5〜6杯は飲んでいただろうか?そんなところに絶世の美男子は現れた。
確かに噂のとおりだった。同じ空気を吸っているのに、こうも違う生き物が出来るのだろうか?と素直に思ってしまった。
背丈は180センチ強、躯つきは全体的に細身で脚がすらっと長いのに肩幅が広く、男らしい要素も兼ね揃えている。そして、アジア系ともギリシャ系とも言える彫りが深く神秘的な顔立ちに、吸い込まれそうな大きい濃茶色の瞳。クリクリのクセ毛が額や頬を縁取って少年のようなあどけなさを醸し出している。

私のタイプとはかけ離れていたが、認めざるおえない美貌だった。
その日の事は、あまり覚えてはいない。酔いつぶれる事が目的で呑んでいたのだから、下らない話をして、酔いが回った頃に岐路に着いたのだろう。
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