見つめていたい
「田崎さん。他の人来るまで適当に座ってて。」


「あっ、はい。」


彼に言われて、四つの席の一番端に座る。


入社式が始まるまで何をしていたらいいのか分からなくて、ただ、自分の履き慣れないパンプスのつま先をただ見つめていた。


そんな視線の先に男物の靴が映る。
ふと視線をあげて見ると、彼が目の前に立っていた。

「田崎さん。」

えっ?なに?

「は、はい。」


「後で、改めて自己紹介はさせてもらうけど・・・俺は、成瀬貴哉(ナルセ タカヤ)です。君たちの教育係り兼リーダーだから。これからよろしくね。」


「こちらこそよろしくお願いします。」

膝に付きそうになるぐらい頭を下げ挨拶をする。


彼は成瀬貴哉さんか・・・
教育係り兼リーダーって事は、会社に来ればいつでも一緒に居られるんだ。

はっ!?
あたし何考えてるの?
彼は上司。
はじめ見たときにドキッとしたのは、大人の男の人に出会った事がないから、ちょっとビックリしただけ。



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