夕暮れ行進曲
 片手で小さく敬礼のポーズを取り、立花はポマードとは逆方向の佐野生徒の机のほうへ向かっていった。
俺は深く息を吸ってポマードのところへ向かう。

 不思議と心は静かだった。しかし心臓の音が妙に大きく聞こえて、俺は「ああ、これが絶望というやつか。」と死んだような気分になった。

 ここでもし「ポマード先生!」なんて呼んだらあいつに殺されるんじゃないかと、どうでもいいことを考えはじめた。

 ポマードがこちらを見た。冷たい目である。見たくせに呼ばないで、また背中をこちらにむけた。
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