夕暮れ行進曲
 やったこともないタップダンスの真似をして音を立てていると、知らない生徒が階段を上がってきたので急いで止めた。
ちょっと耳が熱くなった。

 下駄箱で革靴に履き替え、自転車置き場に向かう。
愛車の鍵を2つ、外しているとジャージ姿の女子が1人こちらに近づいてきた。
見覚えがあった。

 俺は以前、ほんの2ヶ月ほど卓球部に入っていた。初めての大会でボロ負けして以来、部活も休みがちになり、とうとう辞めた。
そんな部の中で唯一俺より弱い女子、坂井だった。

 坂井は1人でこっちに来た。

「先輩、お疲れ様で~す。」

「あ、お疲れ。」
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