夕暮れ行進曲
 そっと助手席に人体模型をねじ込むと松重先生は満足そうににやりと頬を吊り上げた。

 オープンカーから頭がはみだした人体模型にシートベルトを掛ける松重先生の姿は一歩間違えばギャグだった。

 ちょんちょんと肩を叩かれたので振り向くと、立花がまるで「こういう人だから。」と言うように俺に向かって軽く頷いた。

「顕微鏡は後ろの座席にな。いや、ご苦労さん。」

 立花が顕微鏡を乗せようとしたが、なんだか危なっかしいので俺が変わって置いてやった。
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