妻へのラブレター
「今日は母さん来れないみたいだよ。」

貴子の言葉に小さくショックを受ける。

「別に何もないから、来なくていいんだよ。登喜子も休んだ方がいいよ。」

と、まだ強がるだけの余裕がある。

「早く良くなってね。毎日病院来るのは大変だから。」

「来なくていいぞ。俺は元気だから。」

僕と貴子の会話は明るく空々しく響く。

お互いに嘘の会話をするしかない。

『いつ死にそう?』『まだかな。』なんて会話が出来るほど強くはないから。
< 16 / 75 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop