妻へのラブレター
「…俺は、五年も前から癌なんだぞ?」

明夫の顔が凍りつく。

そして

「…すまなかった。」

と頭を下げた。

こんなにすぐに謝られるなんて想定外で、逆に僕が焦ってしまった。

その微妙な隙間に明夫はスッと入ってきて、僕の怒りを収めようとする。

昔からそうだった。

そして今日は、僕が自ら明夫のペースに巻き込まれてやる事にした。

明夫はたった一人の弟だから…。

確かに愛した弟だから…。
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