妻へのラブレター
なぜ…僕はここにいるのだろう…。

なぜ登喜子は…泊まり込むのだろう…。

なぜなんだ…。

聞きたいけど…聞いたら僕は壊れてしまう…。

そんな気がするから、聞かないでいる。

窓から見える木々が風で揺れている。

貴子がそれに気づく。

「今晩から明日の朝まで台風が通過するんだって。父さん、きっと母さんが喜ぶよ。母さんは昔から雷とどしゃ降りを窓から見るのが大好きな人だからさ。」

「ここは…登喜子には特等席だな…。」

貴子が小さく笑った。
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