妻へのラブレター
癌になった僕をおふくろは登喜子に押し付けるかのように

『登喜子さん、あとはよろしく。』

と言うんだそうだ。

登喜子が怒っていたのを思い出す。

『元気な時は、すぐ呼び出してたのに…これからは、来なくていいからって…。何っ?』

怒った登喜子に心の中で僕は答えた。

エリートの肩書きもなく、癌の闘病生活を送る長男は…もう価値がない…って事さ。

僕とおふくろはこうして会わなくなったんだ。
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