妻へのラブレター
「登喜子…行くよ…。もう…行くよ…。」

「そんなに急がなくても…。」

「…今…がいいんだ…。」

バルセロナが近づいている。

僕に無言で登喜子がタオルを握らせてくれる。

あんなに邪魔をした足から体が離されていく…。

やっと解放された…。

もう痛みも感じない。

登喜子が僕を見ている。

見守ってくれ…。

あとはただ見守ってくれればいい…。

…ありがとう…登喜子。

ありがとう…。

君に届くだろうか…。

君に届け…。

最後の願いだ。

ありがとう。
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