つま先立ちの恋


7月の日の入りは遅い。一度落ちた太陽は月とバトンタッチをすると、明日が始まるまで顔を出さない。

校舎は真っ暗で、放送部の部室にだけ明かりが灯っていた。


「灯歌ちゃんっ!」


内側からドアが開くと、そこから葵ちゃんが今にも泣き出しそうな顔で現れた。そのままガッツリと私を抱きしめた。

「もおぉぉ~! 心配したんだからねっ。メールしても電話しても反応ないんだもん。どっかでのたれ死にしてたらどうしようかって…っもう、心配したんだから!!」

キャンキャンと子犬みたいに葵ちゃんが一気にまくしたてた。

「良かった~、、、生きてて、、、」

泣き出す5秒前の鼻息が熱いぜよ、葵ちゃん。

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