つま先立ちの恋
「あ、和泉君たちだ」

葵ちゃんの声に、和泉を含む数人の男子が振り返る。

振り返った和泉は何も言わない。

何だか急に胸の中に焦りがこみあげてきて、私は慌てて話しかける。

「男子も勝ったの?」

「あぁ。サッカーはPKで負けたみたいだけどな」

「女子もバレーは一回戦負けだって」

「あいつらは元々やる気のねぇヤツらばっかだろ」

そう言いながら和泉はトーナメント表をじっと眺めている。

私はと言うと何だか、居心地の悪さみたいな物を感じていたんだ。


………和泉の口調に。


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