つま先立ちの恋
フーはまだ、私の後ろ姿を見ているだろうか。

だとしたら、まだ我慢しなくちゃ。今立ち止まったら気付かれる。まだ我慢しなくちゃ。今立ち止まったらきっと私は振り返っちゃうから。

私は腕で口を押さえながら歩き続けた。


急いで角を曲がってエレベーターホールに逃げ込んだ。一番近くにあるエレベーターのボタンを押すと、運が良かったのかすぐにドアが開いた。

私はなんの躊躇いもなく乗り込んで壁に向かって突き進み、そこにしゃがみこんだら膝の上に両腕を組んで、その上に顔を突っ伏した。


ああ、もうこれで大丈夫。


後ろでドアの閉まる音が聞こえたのと同時に、こらえていた物が一気にあふれだす。


「………、、私、本当にバカだ、、、」


熱い涙が頬に伝うこともなく落ちた。


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