つま先立ちの恋
その時、後ろからドアの開く音がした。


え、、、、と思って顔を上げるとそこには、


「どこまで世話をやかせるつもりだ」

「フー…」

開いたドアを閉まらないように腕で抑えながら立つフーが私を見下ろしていた。


え？なんで？と私が声にならない問いかけを目で訴えると、フーはきゅっと眉をしかめて言った。


「…お前はエレベーターの乗り方も知らないのか。フロア階数のボタンを押さなければ、動くはずないだろう」

「え、あ、そっか…」

なんて、言いながらふらりと立ち上がる。その様子を目で追うようにフーの目線も動いた。そして、私の目の高さで止まる。


「……お前らしくないと思ったら、案の定だな」

「え？あ！」

フーに言われて慌てて顔を両手で拭った。

しまった。見られた。隠しようもない涙のパレード。それでも私は隠そうとしてフーに背中を向ける。そうしたら、

「……だから、背伸びのし過ぎだと言ったんだ」

後ろから、誰かに包み込まれたような気がしたと思った。

それを確かめようとして動き出した私の思考を、エレベーターのドアの閉じる音が遮断した。

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