つま先立ちの恋
三人で体育館へ向かうと、ボールの音と一緒にバッシュの音が聞こえてきた。

私、この音好きなんだよね。キュキュッって。気持ちがいい。意識しなくても体と心が喜び出した。

一階はすでに人でいっぱいだった。入る隙間もないくらい。仕方なく私たちは階段を上り、仲良く並んで二階から体育館を見下ろすことにする。

そこでプレーをしていたのは卒業したばかりの3年生たちと、1・2年生の合同チーム。みんな楽しそうに、だけどみんな真剣な顔でキャラメル色のボールを追いかけてる。

「お~、やってるやってる」

手のひらを水平にして眉の上に充てながら、葵ちゃんが楽しそうに声を弾ませた。

葵ちゃんはつい最近、有名な某バスケットボールの漫画を完読したらしくて、その目はキラキラと輝いている。

『あ、和泉くんだね』

「あ、本当だ」

私は手すりから身を乗り出して声を張り上げた。

「和泉ぃ~!」

声が届いたのか、5番の動きが少し止まった気がした。何かを探して首を巡らし、二階にいる私にたどり着く。

気付いたかな?
手ぇ振ってみよ。

「灯歌!」

見上げる凛々しいその顔には、キラリと光る汗が流れていた。

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