つま先立ちの恋
これは収穫だったな。


そう、ふと視線を流した時だった。視界の端にあの男の姿が見えた。

随分と早かったな、などと軽く通り過ぎようとした俺の目がその男の隣りに並ぶ女を捉えた瞬間、それを拒むように向こうからの視線の糸に縫い止められた。


―……………まさか。


瞳が揺れた。それを認めることは耐え難かったが、俺は確かに揺れたのだ。あの男、岡田明人の隣りに立ち、こちらを見つめるその姿に。

どんな姿をしていようとも変わらない。その、まっすぐこちらへ向かってくる目は間違えようがない。


思わずよぎる短い言葉。


―………………やられた。




あの男の隣りにいるのは、「孫灯歌」だ。


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