つま先立ちの恋
私から青いスポーツバックを受け取り、和泉はまた肩にかける。私は歩き出し、

「てかさ~、着替えるのに何分かかってんの? みんな帰っちゃったじゃん」

「しょーがねえじゃん。出てきたら後輩が待ってたんだから」

「・・・女の子?」

「そ、女の子」

顔色ひとつ変えずに即答する和泉。そんな和泉と並んで歩きながら、

「相変わらずモテるねぇ」

「毎回断る俺もツライんだって」

「なら、付き合っちゃえば? 聞いたよ。藤組のヒカルちゃんに告られたって」

和泉からの応答がなくなる。

それから和泉の足が少し早くなった。
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