つま先立ちの恋
「ヒカルちゃん、モデルのスカウトの話が出てるらしいよ」

私は和泉の背中に向かって話しかける。てか、早いって。こっちは和泉みたいに足長くないんだから。

「何、ああいう可愛い子じゃダメなの? キレイ系がいいとか贅沢言う感じ?」

それでも私は和泉を追いかけるつもりはなかった。いつもと同じ歩幅で和泉の後ろに続いて校門を出る。そうしたら、

「そういうんじゃねーよ」

「え? 何、聞こえない」

ピタッと和泉が立ち止まる。私もつられて立ち止まる。

「俺は、とりあえずとかそういうのムリだし」

坂道の途中で和泉が振り返る。あ、新鮮。私の方が少し背が高い。

「それに、」

「・・・”それに?”」

首を傾げて和泉の言葉を繰り返した。そんな私を見つめる和泉の目は、いつになく真剣で。


一瞬だけど、和泉がモテる理由がわかった気がした。


うん。
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