姉弟道
*゚。梓Side。゚*

「――リコ…」

目の前に『松田堂』の看板があるのに、それがぼやけて見えたのは気のせいだろうか?

息を切らして、樫野の制止を振り切ってリコを追いかけたのに、俺はその中に入ることができない。

何をやっているんだよ、俺は…。

フラフラとしたおぼつかない足取りで、俺は近くの電柱にもたれかかった。

「――最低だな、俺…」

自嘲気味に呟いた。

好きな女を泣かせるなんて、自分でも何てことをしてしまったのだろうか?

リコだけは泣かせたくなかった。

なのに、俺はリコを泣かせてしまった…。

「――バカ…」

リコじゃなくて、俺の方がバカだ…。
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