姉弟道
「――は、ハンカチです…」

そう言った俺の声は震えていた。

「昨日のハンカチをお返しします…」

俺の顔、きっと紅いよな?

何してるんだよ、すっげーバカじゃん…。

そんな俺に対して、石楠花先生はニコッと笑いかけてきた。

「――ッ…」

その笑顔は反則にも程があると、俺は思った。

ヤバいったらありゃしない…。

けど、そんな笑顔を愛しいと思っている自分もいた。

「ありがとね」

石楠花先生が俺の手から紙袋を受け取った。

「じゃあ…その、失礼します」

紅くなった顔を見られたくなくて、俺は走って彼女の前から立ち去った。

マジで何してるんだよ…。

この思いを伝えるのはまだ先だなと、走りながら俺は思った。
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