姉弟道
「悪い、樫野」

俺は謝った。

「元からその気はなかったんだ。

年齢的にも結婚はまだ早いし、まだ考えられない」

樫野は黙って俺の話に耳を傾けている。

「それに、さっきの話になるんだけど…俺には好きなヤツがいるんだ」

俺がそう言ったとたん、リコがこっちに視線を向けたような気がした。

「子供の頃から、ずっと見てるヤツがいるんだ」

俺は言った。

「年下のくせにわがままで、意地っ張りで、自分のことをまるでわかっていないようなヤツ。

そんなヤツだけど、俺は好きなんだ。

会ったら会ったで、すぐにケンカするようなヤツだけどな」

すぐ近くにいるリコを思いながら、俺は樫野に言った。
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