姉弟道
俺は申し訳ないと言うよう気持ちをこめて、
「ごめん、この見合いは最初からなかったことにしてくれ!」
と、深く頭を下げた。

もちろん、こんなことをして樫野が許してくれるなんて思っていない。

それで許そうなんて、なおさら思っていない。

「――私…」

それまで何もしゃべらなかった樫野が呟くように言った。

やっぱり、許してくれる訳がないか。

そう思いながら、俺は顔をあげた。

そこには、凛とした顔で俺を見つめている彼女の顔があった。

俺の気のせいだろうか?

樫野が怖いような気がする…。

何を言い出すのだろうかと思っていたら、樫野の唇が動いた。
< 75 / 221 >

この作品をシェア

pagetop