姉弟道
「どうされたのですか?」

厨房にいたのは、杉里さんだった。

あれれ?

父さん、どこへ行ったんだ?

一瞬そう思った俺だけど、
「あ、そっか」
と、すぐに思い出した。

父さん、今日は町内会の用事があるからって母さんと一緒に今さっき出かけたんだ。

だから杉里さんだけがここにいるんだ。

いやー、すっかり忘れてた。

…だけど、どっかで聞いたような気もするけど。

そう思いながら、
「あのさ、失敗したのある?」

俺は杉里さんに聞いた。

「失敗作ですか、はい」

杉里さんは首を縦に振ってうなずくと、漆塗りのお盆に乗せた失敗作の和菓子を持ってきた。
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