~天使はふたたび舞い降りる~
雨は激しかった。

かさなんてないのと同じ
跳ね返りで
足もとがすぐベちゃベちゃになった。


「あいつ大丈夫か・・・・」
時折、鳴り響く轟音に
俺だって心臓が飛び出そうになる


尻のポケットでバイブが
震えた・・・・

「もしもし」


「にーにー・・・・・・」


「奈楠か?」
雨の音に消されてしまいそうな
消えそうな声だった。


「今どこにいる?」

轟音が鳴り響く



雨でかすむ街を奈楠がいると言う所まで
全力で走った。



奈楠は自転車を押しながら
とぼとぼ歩いていた。


「奈楠~~~~~!!!」
雨の音に消し去られないような
大きな声で
奈楠の名前を呼んだ。


「にーにぃ~」
奈楠がヘナヘナと座り込んだ。


俺は思い切り走っていって
奈楠を
強く抱きしめた。


「怖かった・・・・
芳樹・・・・・」


奈楠が芳樹と呼んだ。
いつもと違う響きはきっと
心細かったから・・・・


「バカだな
自転車置いてきたらよかったのに」
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