～天使はふたたび舞い降りる～

「自転車は宝物だよ。
小さい時ずっと欲しかったの。
友達が乗ってたから。
友達は、私の逃げ場だったの。
楽しかった～
学校も放課後も
だけど自転車を買ってもらえなかった。
最初はみんなの後ろを
必死で走ってついていった。
最初は、走る私を気にしてくれたのに
だんだん気にしなくなって
私は追いつかなくなった。
そしておいていかれるようになった。
みんなの足手まといに
なってるのはわかってたけど
自転車があれば
あの頃もっと楽しかったのに・・・」


その頃の奈楠が目に浮かんで
悲しくなった


恵まれなかった
子供時代


多分奈楠はきっと
俺より
孤独しか知らないで育ったんだろう


「欲しいもの俺がかってやるよ
何でも・・・・・。」




「ううん・・・
一人ぼっちじゃないだけで
充分過ぎるほど幸せだよ。
こんな雨の中
迎えに来てくれてありがとう・・・」


そう言って
俺の肩に頭をのせた。



雨は俺たちを打つ
強い雨が歩道にはね返る



自転車を押して
歩く

二人の帰る場所へ・・・・・・