~天使はふたたび舞い降りる~
俺は胸が痛んだ。

「もちろん、愛してる人ができて
体の準備が整えばね。」


「愛してる人はいるよ。」


「芳樹でしょ?
最初に会った時から
そうじゃないかなって思ってた。」

「ほんと?やだな~」

奈楠は笑った。


「歩来さん、幸せ?」

「うん、幸せだよ。
芳樹をどうして選ばなかったの?」


俺は慌てた。

「う~~~ん・・・
ずるいけど私は二人とも
愛してたの。
最初は素良がずっと好きだった。
芳樹が現れて気持をかき乱されて
いろんなことを知った。
芳樹は傷だらけで
守ってあげないと
暴れだしそうだったから
そんなとこにも惹かれて
不思議な恋だった・・・・」


「芳樹が?」


「想像つかないでしょ?
今の芳樹は、いろんな傷を
吸収してとても素敵になった。
人の痛みは敏感に感じるし
まっすぐな目ももっているし。
私と素良の背中を押してくれたのは
芳樹だから・・・
きっと私の心の小指の差を
芳樹は知っていたのね・・・」


「今でも歩来さんが好きだよ。」


「そうね。
幸せになってほしいって
見守ってくれてるわ。
だから私は贅沢な人生だと思う。
昔は誰にも相手にされなかったのよ。」


「え~~?」

中学までのエピソードを
面白おかしく語る歩来
俺も初めて聞いた。

歩来も傷を背負ってきたから
あんなに強いんだと
思った。
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