~天使はふたたび舞い降りる~
その夜から奈楠はうなされた。


「たすけて・・・
やめて・・・
あっちいって・・・・」


悪夢にうなされる奈楠を
俺は起こして
もう一度寝かせる。


林は
奈楠の心によっぽどの
傷を植え付けたんだろう。




「怖い・・・
怖い・・・・・・」



俺の心にも
あの日の母の悲鳴が聞こえる。
俺に聞こえないように
押し殺す声


「やめて・・・
おねがい・・・・・」



母が悲鳴を上げる。
俺は母を助けに行った。


「芳樹、来るんじゃない!!」


「おかあさんを泣かすな!!」
小さい俺はそれでも
母を守りたかった。



「おまえの顔見てるとムカツクんだ。
おまえ、かあさんに似てないな。
おやじ似だろう?」



林は俺の頬を打った。


「やめて!!
何するの~芳樹に手を出すなんて
絶対許さない!!」


そんな日が続いた地獄のある日
奈楠は俺の隣から
消えたんだ。
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