~天使はふたたび舞い降りる~
あの時
そんな気持ちを知ることもなく
ただ、一歩踏み出すために
奈楠を抱いた。


この一歩を踏み出したら
これから先は
兄ではなく男として
妹ではない奈楠を
愛してあげられると思っていた。


奈楠が俺から
姿を隠すための
最初で最後の行為になるなんて
思いもせずに……
手を伸ばせば
これからはいつでも
抱ける…そう簡単に考えていたから



四季の決意に
この行為がどんなに大事なことか
わかった。

時には 遊びの延長で
してきた行為だった。
それだけのために
楽しんでいたことの方が多かった。


だから歩来を愛したとき
違う男のことを想っている
歩来を憎らしく思ったり
行為は心がなくても
感じてしまう女の習性を
軽蔑したり
俺は揺れ動いてきた。

歩来が愛しくて
憎くて
思い通りにならないジレンマに
イラついていた。


俺には一方的な愛があったから



今まで俺は優しくなかったかも
知れない。
いっぱしの知識をフルに使っても
心はどこか冷めていたから



たくさんの女と俺だけが
楽しんできた。



そこにいろんな決意があることなんて
考えていなかったかも
知れない………





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