~天使はふたたび舞い降りる~
俺は転がりながら
その見える方向に走り出す。


「奈楠!!!」


よわよわしい声が俺の耳に
届いた。


「よし・・・き・・・・」


白いコートが赤く染まっていた。


「奈楠!!!
おまえ、いったい何してるんだ!」


「芳樹…よかった…
間に合った・・・・はぁ…はぁ…」

よわよわしい息遣い


俺はすぐに救急車を呼んだ。


「つたえたいことが 
あったの……
さっき……言わなかったから
罰があたったのね……」

俺の胸に顔をうずめた。


「私は……もう……ダメみたい……」


「何いってるの?
治療するんだろう?」


「わかるの。もう終わりだって……
急がないとって
でもお金もなくて……
歩いてきたの……」


足が真赤になっていた。


「どうして?
どうしてこんなむちゃを?」


「行ってみて…
あの食堂……あそこに行ったら
わかるから……
私たちの運命の……終着だから……」


そう言って俺に真っ赤になった
小さい手にしっかり握った
マッチを渡した。


そして激しく咳き込み
吐血し出した。


真赤に雪が染まっていく・・・・・

奈楠を抱き締めて
落ちてくる雪を見上げた。

「神よ・・・・助けてください!!!」
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