東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「浦島…太郎……」
凱にも同じことを言われた。
「ココはお前のいる場所じゃないッ。竜宮場でもNYでも、さっさとどこへでも帰っちゃえよッ」
それだけ言うと、ロムは教室を飛び出して行ってしまった。
「あたしはっ……あたしは浦島太郎なんかじゃない……」
ひとり残されたあたしは、ロムの机の上に突っ伏した。
手のひらにロムが落とした涙が当たってヒンヤリと冷たい感触だった。
ソレが呼び水となって、今度はあたしの目からも止めどなく涙があふれ出た。
アメリカのユタ州からアンモナイトの化石をギフトとして持って帰ったのも、そして自分の気持ちを全部押し殺して恋のキューピットに徹しようとしたのも、全部ロムの喜ぶ顔が見たかったからなのに……。
なんでなの…? あたし、なんか悪いことしたかな……?
涙は家に帰っても止まらなくて、このまま体中の水分が全部なくなっちゃうんじゃないかって思うくらいに、あたしは一晩中、枕を涙で濡らし続けた――――――