東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~



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翌朝、2年C組の教室に足を踏み入れると、そこにロムの姿はなかった。

まだ学校に到着していないだけなのか、それとも昨日あんなことがあったあとだし、もしかしたら今日は休むのかも……。


代わりに、まぶたが腫れ上がった真っ赤な目に、まだ授業もはじまっていないのに、何事もなかったように英語の問題集を解いているキクチ・ヨーコが飛び込んできた。

「勉強の邪魔して悪いけど……ひとことだけいいかな……?」

“えっ?”と怪訝(けげん)そうな顔で、あたしを見る彼女。


「ごめんなさい…あたしがロムをけしかけたせいで、ヨーコさんにも……ロムにも迷惑かけちゃった……」


「なァ~んだ。ひとこと言いたいって言うから、てっきり文句言われるのかと思った」

緊張感が解けて、表情が緩む彼女。

言いたいことなら腐るほどあった。

だけど寝不足で、ソレを言う元気もない。
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