東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
ビィーン、ビィーン…
頭の上あたりから聞こえてくるバイブの振動音に目を上げると、あたしの制服の上着とスカートがトイレのドアに無造作に掛けられていて、そのポケットの中からのケータイの振動がドアの板に響いていたみたい。
事情も分からないまま、とにかくポケットからケータイを取り出してみると、心当たりのない番号からの電話だった。
“ピッ”と着信ボタンを押すと、キクチ・ヨーコの声が聞こえてきた。
あたしは彼女に番号なんて教えてない。…ってことはユーが彼女に教えたってコト?
「今どこ? ひょっとして、まだトイレで寝てた?」
「お菊! アンタ、あたしが気絶してるあいだに、なにしたの!?」
かみつきそうな勢いでケータイに怒鳴る。
「“なに”って。下着姿の恥ずかしい画像を撮っただけだよ」
「…っ!?」
「これでもう栗栖さんはあたしの思うがままの“操り人形”ね。もし、逆らったりしたら、ネット上にあなたの恥ずかしい画像をバラまいてあげるから、覚えときなさい」