東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
「そ、そんなっ…」
そのとき、あたしは顔からサーッと血の気が引くのを感じた。
「ねぇ、なんで? たかだか英語の答えが間違ってるのを指摘したくらいで、なんでこんなひどいことされなきゃいけないの!?」
「分からない?」
電話の向こうから聞こえてくる彼女の声は、ひどく落ち着き払った感じのソレだった。
あたしの恥ずかしい画像という“切り札”を手に入れたことで、もはや完全に勝利できたという余裕がそうさせているんだと思う、
「わ、分からないよっ…」
「思い出せない? 忘れたの?」
「“忘れた”って……あたし、アンタになんか悪いことした?」
「栗栖さんは忘れたかもしれないけど、あたしはアノ日から1日だって忘れたことなんてないよ」
そう前置きしてから彼女はこう続けて言った。
「忘れもしない、アレは小4のときだった。学芸会で昔話のお芝居をすることになって、あたしが衣装の着物を着たのを見て、栗栖さん、あたしになんて言ったか覚えてる?」