東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~


“いけふくろう”っていうのはJR池袋駅構内に置かれた鳥のフクロウのカタチをした像のことで、渋谷駅前の忠犬・ハチ公の像と同様に待ち合わせスポットとしても有名だ。

「ちょ、ちょっと、ソレってあたしに“売り”をやれ、ってコト!?」

ある程度の無理難題は覚悟していたつもりだけど、まさかいきなり“売り”をやらされるとは思わなかった。

「そーだよ」

悪びれたカンジもなく、サラリと言うあのオンナ。

「イヤだよ、あたし……ほかのことなら言うこと聞くけど、“売り”だけはゼッタイやだ」

「なに言ってんのよ。栗栖さんにとってはオトコと寝るなんて日常茶飯事でしょ?」

「そ、そんなっ……あたし、まだvirgin(ヴァージン=処女)だよ」

「そんなの知らないわよ。操り人形であるあなたには、そもそも断る権利なんてないわ。分かるでしょ? もし断ったら、ネットに栗栖さんの恥ずかしい画像をバラまくからね」

「…っ!!」

「いいのかなぁ? それなら、それで、別にあたしはかまわないけど、恥ずかしい思いをするのは栗栖さんだからね」

「………」
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