東京エトランゼ~通りすがりの恋物語~
ひょっとしてクオーターとか……?

たぶん、そのときすでに、あたしの脳ミソには“アンドレ”という語感が刻み込まれていたと思うし、それにまちがいなく、あたしは彼に興味を持ちはじめていた。

「いや、ちょっとお客様のお名前の漢字が分かんなくて…」

“ハァ…”と、ため息をつく女の人。

「すみません、お客様。彼はまだアシスタントの見習いなもので、とんだ失礼をいたしました」

「いえ……」


このヒト、アシスタントなんだ……。


「今日はカットのほうでよろしかったでしょうか?」

「あ、はい……」

「安堂くん、お客様を席にご案内して」


“アンドウ”って名前なんだ……じゃあ、さっきのアンドレっていうのはアダ名?


「え? でも3時からご予約のお客様が…」

「言わなかったっけ? “さっき電話があって、急用で来られなくなったから”って」

「聞いてねぇけど、ま、いっか」

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